なぜ人は夢を見るのか?
どうもこんちわ!クラッシャーですー。
僕まだこの本読んでるんですけど、、、
神経学者のマシュー・ウォーカー(Matthew Walker)博士の「Why We Sleep」って本なんですが、この中に「Why We Dream?」(なぜ人は夢を見るのか?)という章があって、とても興味深い内容だったので今回は「人はなんで夢を見るのか?」についてわかったことをシェアしたいと思います。
読みたい本がいっぱいあって、この本読むの1回後回しにしてたんですけど、この面白そうなテーマを見つけたのでまた読み始めました。
まあ普通に今まで生きてきて、なんで人は夢を見るんだろうと疑問に思ったことがなかったので、やっぱり学者とか研究者って普通の人があまり疑問に思わないようなことを疑問に思えて普通にすごいですわね。
それでは夢が持つ力を早速紹介していきたいと思いまっする!
夢の持つ効果はズバリ2つです!
夢セラピー
1つ目の効力が「夢セラピー」です!
まずはこれが一体どういう効力なのかを説明する前に、夢についての基本知識を説明すると、
まず睡眠には「REM Sleep(レム睡眠)」(浅い眠り)と「NREM Sleep(ノンレム睡眠)」(深い眠り)の2つの睡眠のパターンがあり、夢はレム睡眠の状態の時に見ます。
なのでレム睡眠が夢を発生させるということです。
そして長い間、夢はただの付帯現象だと思われていました。
付帯現象というのは、電球における熱が発生する現象みたいなもので、電球の本来の目的は光を作ることですが、その結果として熱も発生しますよね。でも熱の発生は本来の目的ではなく別になくてもいい機能です。そういった現象を付帯現象と呼ぶのですが、夢もこれと同様のものだと長らく考えられてきました。
しかし、レム睡眠にとっての夢の発生は、電球にとっての熱の発生とは違い、夢それ自体にとても重要な効果があるということがわかってきています。
より正確にいうと、レム睡眠と夢これはいつもセットなのでレム睡眠+夢の力です。(逆を言うと、レム睡眠の状態になるだけだと不十分で、夢を見ないと発動しない大事な効果が複数あるってことです)
そこでみなさん、「Time heals all wounds」という英語の諺をご存知でしょうか?これは「時が全ての傷を癒す」という意味の諺で、僕の大好きなロックバンド「L’Arc〜en〜Ciel」の「FOREVER」という曲の中にも、「言葉が傷を癒して 時が痛みを包んで」という歌詞が出てくるくらいで、これはみんなが共通して持ってる感覚だと思います。
しかし、神経学者のマシュー博士は「傷を癒すのは時間なのか、それとも夢を見ている時間なのか?」ということを疑問に思います。
なぜそのように思ったのかというと、
実は1日24時間の中で唯一、ノルアドレナリンと呼ばれるストレス系の物質が夢を見ている時だけ脳内から完全にシャットアウトされるのですが、それと同時にレム睡眠時には記憶や感情を司る脳のエリアが動き出すので、マシューさんは夢を見ているノーストレス状態の時に脳が記憶や感情を再処理してくれることによって、自分が経験した記憶や経験から嫌な感情やストレスを脳(夢)が取り除いてくれているのではないかと考えたからです。
これがマシュー博士が考えた「夢セラピー」の仮説です。つまり夢が心の傷を癒してくれてるんじゃないのかということです。
確かに子供の頃とかの割と衝撃的だった経験とかを思い出して見ても、その当時に感じたレベルの感情までは再現されないので、この「夢セラピー」の機能は人間の生き残り戦略としてもとても理にかなっていると思います。
なぜなら嫌な記憶、特に怖かった記憶などは危険を察知する時に「あ、この道は危ないやつだ」とか「こいつはやばいから近づかないほうがいいな」とか思えるのでめっちゃ大事だと思いますが、そういった記憶を嫌な感情とセットで思い出すのは毎回精神的に疲れちゃうので、嫌な記憶や怖かった記憶から嫌な感情を取り除く、もしくは緩和することは人間の生存戦略としてめっちゃ必要な能力だと思うからです。
というわけで、ここまでは全部仮説です!
(なんか僕のブログ「仮説!」とか「予想!」「ほにゃららの機能!」みたいな、なんかそんなん多いな。)
そこで、マシューさんはこの「夢セラピー」が本当なのか確かめるためにある実験を行いました。
エモーショナルイメージ実験
この実験は、健康的な若い成人の被験者に、心にくる系のつらい感情を引き起こすような複数の画像や写真などのイメージを見せて、その時の脳の動きをMRIでスキャンしておき、12時間後また被験者にMRIスキャナーの中で同じイメージを見せて、被験者に感情の変化がどれくらいあったのかを聞いて調べる実験で、主観と客観を両方取り入れたテストです。
そしてこの被験者たちは2つのグループに別れました。
①朝にイメージを見て、12時間寝ずに、夕方にまた同じイメージを見たグループ
②夕方にイメージを見て、12時間の間に睡眠をとり、次の日の朝にまた同じイメージを見たグループ
結果は、②のグループの被験者たちは、再度見たイメージのエモーショナル度合いがかなり減ったと報告し、MRIスキャンでも扁桃体という感情などを司る脳の部位の活動がかなり減っていたことがわかりました。さらに寝た後は感情の制御などを司る前頭前皮質の部位も介入しだしていたみたいです。
逆に①のグループの被験者たちは1回目と2回目でエモーショナル度合いはあまり大差がなかったと報告し、MRI上でも大きな違いは現れなかったみたいです。
そしてマシュー博士は②のグループの睡眠中の脳の動きもMRIで計測していたのですが、やはり予想通りレム睡眠で夢を見ている状態の時に脳内のストレス系物質のレベルがガクンと下がっていたみたいです。
このことからも、やはり「夢セラピー」は存在するっぽいってことがわかりました。
なので時そのものが心の傷を癒すのではなく、夢を見ている時が心の傷を癒してくれているってことですね。
このように、レム睡眠中の夢が心の傷を癒すことは確認できましたが、夢を見ることはうつや不安感などの病気から心を守るためにも必要なことだったりするのでしょうか?
カートライト博士の夢コンテンツ実験
以上の疑問を解決したのが、シカゴにあるラッシュ大学の神経学者で夢研究のパイオニアであるロザリンド・カートライト博士(故)です。
彼女は離婚やひどい別れ方をして心に大きな傷を負った結果、うつのサインを見せるようになった人々の夢の内容(コンテンツ)の研究することを決めました。
カートライト博士はそのちょうど感傷的なトラウマを持った時期にあった患者たちがどんな夢を見たのかのレポートを集めて、患者たちが夢の中で現実世界に関わるようなコンテンツ、または共通するテーマを持つコンテンツを見ていないかの調査を始めました。
そして1年間かけて、その患者たちの感傷的なトラウマによって引き起こされたうつや不安感に関わる病状が改善されたのか、それとも未だ続いてしまっているのかを追跡しました。
そしてその調査の結果はというと、
その感傷的な出来事が起きた時期にそのつらい経験自体の夢を詳細に見た人たちだけが、臨床的な症状の緩和をし続け、1年後には臨床的にうつの症状が全く見られない状態にまで回復していました。
しかし、夢は見ていたけど、その経験自体の夢を見てなかった人たちは1年後も未だにそのうつの症状を引きずっていました。
つまり、感傷的なトラウマや深い過去の傷を癒すには、レム睡眠、ましてや夢を見るだけでは不十分で、そのトラウマそのものの夢を見ないといけないことがカートライト博士の研究から示されたということです。
この結果はマシュー博士の「夢セラピー」を肯定するまた重要な立証の1つになりました。
プレイゾシンの奇跡
最後にマシュー博士はPTSD(心的外傷後ストレス障害)についても言及しています。
PTSDの患者は生死に関わるようなかなり強烈な体験によって、そのトラウマからフラッシュバックや悪夢に苦しめられてしまう病気で、退役軍人に多い病気です。
マシュー博士は今まで説明してきた「夢セラピー」がちゃんとこのPTSDの患者たちに発動してないんじゃないのかと疑問に思いました。
例えばフラッシュバックは何かのきっかけでそのトラウマとその時の感情が鮮明に思い出されてしまうことですが、マシュー博士にとってそれはそのつらい記憶から嫌な感情が睡眠中にちゃんと取り除かれていないだけのように思えました。
そしてPTSD患者がよくいう言葉があって、「単純にその体験を乗り越えられない」と言うそうです。そして「脳からその嫌な体験の感情がデトックスされてない感じがする」というようなことも言うそうです。
もうすでにPTSDの患者は睡眠障害、特にレム睡眠の障害があることが知られていました。
さらにPTSDの患者は先ほど一瞬出てきたストレス物質のノルアドレナリンが神経系から放出される割合が通常より高いこともわかっていました。
以上のことからマシュー博士はある仮説を立てました。
PTSDの患者は脳内のノルアドレナリンの割合が高過ぎるせいで、ちゃんとしたレム睡眠の夢状態に到達することができず、「夢セラピー」がうまく発動しないことで、記憶からつらい感情をうまく取り除くことができなくなっているのではないか。
さらにマシュー博士は、PTSDの診断に必要である「繰り返される悪夢」の症状に特に興味を持ちました。
悪夢を繰り返し見てしまうのは、夢で記憶からその感情をうまく取り除くことができなかったために、そのストレスレベルの高さから次の日も脳がその感情を取り除こうとして、夢でその体験を繰り返す、取り除けない、また次の日も繰り返す、みたいな感じで、悪夢の永久ループが完成してしまっているせいなのではないかと思ったからです。
そこで、脳内のノルアドレナリンの数値を下げることができれば、ちゃんとした「夢セラピー」が発動して、悪夢を見なくなったり、PTSDの症状の緩和ができるのではないかとマシュー博士は考えました。
あとはそれを証明するための実験が必要なだけでした。
そんな時、マシュー博士はある人物との奇跡的な出会いを果たします。
その人物とはシアトルにあるアメリカ国務省管轄の退役軍人病院で働いている医師のマレー・ラスキンドさんです。
二人が出会ったのはシアトルのある会議で、そこは様々な研究の結果を発表する場でした。
その会議でマレー医師はある発見について困惑していることを発表しました。
それは、病院で退役軍人の患者たちの高血圧の治療のために、血圧を下げる薬「プレイゾシン」を処方したところ、患者の血圧をある程度下げることに成功したのですが、その薬がなぜかPTSDの悪夢の緩和にも効果があることがわかったのです。
そしてほんの数週間の治療の後、患者たちはこう言いました「先生!すごいことが起こったんだ!なぜか夢でフラッシュバックの悪夢を見なくなったんだよ。すごくいい気分だ。今はもう眠るのが怖くないよ。」
その後高血圧のために処方した「プレイゾシン」ですが、脳内のノルアドレナリンの数値を下げる効果があることがわかりました。
マレー先生は意図せず、マシュー博士がやりたかった実験をすでに成功させていたのです。
「プレイゾシン」は脳内でノルアドレナリンが高まる度合いを徐々に少なくして、健康なレム睡眠のための脳内環境を作ってくれました。その結果「夢セラピー」が正常に作動するようになり、PTSDの症状、特に繰り返される悪夢の症状の緩和に成功しました。
二人はその会議で意気投合し、お互いの研究についてたくさん話し合ったらしいです。
それぞれの研究がお互いの求めていたものを補完し合う形になって、なかなかすごい偶然ですね。
僕はこの一連の出来事を「プレイゾシンの奇跡」と勝手に呼んでいます。(本には一切こんなこと書いてないです!)
その後この治療法は公式に認定されました。
マシュー博士は、PTSD以外にもまだまだたくさんの未解決の心の病気があるが、今回のことはメンタルヘルス界にとって大変大きな一歩だったと話しています。
The Power of Sleep
と言うわけで、色々「夢セラピー」について話してきて、本当は2つ目の夢の効果について紹介したかったんですが、例によってまた長くなっちゃったので、2パートに分けます。
また、余談になっちゃうんですが、実は今回紹介した「夢セラピー」以外でレム睡眠関係で紹介したかった効果があって、
それというのが、人間や多くの生き物には顔の表情から感情を読み取る能力があるんですが、その時に使う脳の領域とレム睡眠中に動いている脳の領域が全く一緒で、レム睡眠が楽器のチューニング的な役割を果たし、相手の感情を表情から正確に読み取る力を毎回整えてくれてると本の中で紹介されていて、ちゃんと寝ないとこれがバグって表情から相手の感情を読み解く能力がちゃんと発揮されず、多くは相手の表情を怖いと感じやすくなってしまうらしいです。
こんな感じで、寝ないといろいろな体の不調がでまくるっぽくて、最低7時間〜9時間は寝るようにしないとダメらしいですね。
6時間睡眠を10日間続けると、脳の働きが24時間寝てないときと一緒になるらしいですよ!
それでも今世紀に入ってから人間の睡眠時間の平均はどんどん下がってきているらしいです。
このような慢性的な睡眠不足が今後社会にどう影響していくのかはわからないですけど、感覚的にはいっぱい寝たほうが気持ちいいので、僕は何があっても1日7時間以上は寝てます!お昼寝を午後3時までに60分から90分ぐらいするのもいいらしいですよ!僕は夜眠れなかった分はお昼寝で補完してます。
というわけで、今回は「夢セラピー」の紹介でした。
次回は第二の夢の効果「創造の保育器」について紹介したいと思います!一応更新予定日は今回は2週間後ではなく来週の9月2日土曜日の18時にしたいと思います!
それではまた次回も見てくれよな!